幼い頃から楽器との出会いによって音楽が好きになった私は、中学では新たな楽器との出会いを求めて、吹奏楽部へ入部しました。
今回は、クラリネットを初めて吹くまでの話と、基礎練習のメニューや楽器が割れる事はあるのか?という事について書いてみました。
クラリネットを初めて吹くまでの話
吹奏楽部へ入部してからの一年間、体力作りメインの修行期間を経て、もうすぐ2年生になるという頃、ついに自分のパートを決める時期がやってきました。
念願の楽器がもうすぐ手に入る段階ともなると、1年生の間ではどの楽器にするのか、という話題で持ちきりとなりました。
入部してからずっと先輩の練習や合奏を見てきた中で、私の気持ちはアルトサックスに惹かれていました。
初めて目にするその楽器は、金色にピカピカ光る美しい姿と甘い音色を持ち、吹奏楽のステージ編成の中では真ん中に位置する要のような存在で、時にメロディアスなソロも受け持つスターのような存在でしたから、当然人気者です。
一人しか選ばれないアルトサックスに皆の人気が集中していたのですが、早々に担当する子は決まってしまいました。
なんとその子はアルトサックスを既に持っていたのですから、仕方ありませんね。
私の目的は自分の楽器を手にする事ですから、次の候補、クラリネットに希望を変えました。
希望する楽器に唇の形や体つきが合っているか、という事を踏まえて決めていくのですが、この審査には以前の顧問だったカリスマ指揮者の先生も立ち会われます。
なぜ唇の形や体つきが関係あるのかというと、金管楽器を希望する子は唇が薄い方が良い、とか、大柄な子はチューバやコントラバスへと回されるからなんですね。
私は幸い?唇は厚く小柄でしたから、すんなりと第二希望のクラリネットに決まりました。
クラリネットは自分持ちでしたから、両親に購入してもらう事になるので気構えましたが、ほぼ一年間、厳しい体力作りを頑張って運動部並みに体が鍛えられたことや、音を上げずにやってきた事を評価してもらえて、当初は入部を反対していた両親もその頃には応援してくれていましたので、購入してもらい、自分のクラリネットを手に入れる事ができました。
ビュッフェ・クランポンというフランスの老舗メーカーのR-13というモデルです。
部の伝統で有名メーカーの音色や操作性の良いクラスを指定されいたので…金額を見た時は少し震えましたよ。
手元に届いた時には、これですぐにでもガンガン吹ける!と思った私は、同じくそう思っていたクラリネットの友人と、ホルンの友人と連れ立って早速一緒に吹いてみる事にしました。
この時の気持ちといえば、テンションが上がりきって友達の家にどうやってたどり着いたのか覚えていない程、といった感じでしょうか、楽器を初めて手にした音楽好きなら分かるでしょう。
さて、いざ吹こうと集まったものの、先輩から組み立て方や吹き方のレクチャーは受けたばかり、自分たちだけでは組み立てるところから一苦労です。
クラリネットは5つのパーツを組み立てて一本の状態になるのですが、それ以外にも吹口に装着するリードとそれをマウスピースに留めておく器具のリガチャーがあり、少しでもリードとマウスピースとの隙間のバランスが悪いと音が鳴りません。
更には、ようやく組み立てて音が鳴る状態になっても、リコーダーのような息のスピードとは比べ物にならないくらいの圧を掛けないと音が出ませんし、吹く時の口の形が悪ければ良い音が出ないのです。
物凄くうるさい音を立てる事しかできずに練習を終え、皆で顔を見合わせた事を鮮明に覚えています。
上手くなりたい一心の私はこの時、どんな事があってもあきらめずに練習していく、と決心しました。
クラリネットの基礎練習メニュー
クラリネットできれいな音を出すまでには、とても時間がかかりました。
部活での基礎練習では、最初から楽器を組み立てた状態で吹く事は許されず、しばらくはマウスピースにリードを付けた状態で音が安定するまでひたすら吹き続け、その後タルという部分を付けてまたひたすら吹き続ける、という練習ばかりしていました。
この練習では、吹く時の口の形=アンブシュアを安定させる目的がありました。
実際に楽器の全てのパーツを組み立てて吹けるようになっても、指で音階を付けるのはまだです。
次は指で穴を塞がない、「開放のソ」での練習です。
この「開放のソ」は、繰り返し繰り返し練習しました。
ひたすら「開放のソ」を吹き、ようやく音に厚みが出てきた頃、いよいよ楽しみにしていた音階練習です。
クラリネットには同じ音を出すのにいくつものバージョン(替え指)があったり、シルバーのキーがそれはそれはたくさん付いているので、運指を覚えるのが最初の難関でした。
ここまで来ると、ようやく基礎練習のハイライト、スケールの練習が始まります。
当時のメニューを一部紹介しますね。
①「開放のソ」をロングトーンで何回も繰り返す 15分
②低いミからオクターブキーを押して音変えしながら高いファまでロングトーンで繰り返す 15分
③高いファからオクターブキーを押して音変えしながら低いミまでロングトーンで繰り返す 15分
④低いドからスケールで上がっていく練習の繰り返し 15分
⑤高いドからスケールで下がってくる練習の繰り返し 15分
こういった練習を、地道に積み重ねていきました。
クラリネットが割れることはあるのか?
地味ながら確実にスキルが定着していく練習を重ねていくと、時間に比例して音色も明らかに良くなっていくのが分かり、部活に行くのが楽しくて仕方ありませんでしたが、この後まさかの事態に発展していきます。
私は、自分のクラリネットを大切に扱い、吹き終えたら木の部分は水分をしっかり拭き取ったりと、手入れも丁寧にしていたつもりでいましたが、ある時、マウスピース、タルの順番で組み立てていると、その下にはめる上管の接続部分のコルクの下に、小さな割れを見付けました。
クラリネット本体の黒い部分はグラナディラという木でできていますから、天然素材という事で一本一本個性があります。
木によっては、条件によって割れる事もあるんですね。
最初は、木目とも見える程の小さなキズのような感じだったのが、日が経つうちに隙間が明らかに分かる程の亀裂となっていきました。
完全に割れが入っているクラリネットの状態に恐怖を感じ、学校指定のリペアマンに診てもらうと、最初に「割れが入る木は、繊細である意味質が良い」というような事を言われました。
そうか、と納得した私は傷を修繕してもらい、この楽器とまた向き合っていこうと気持ちを切り替えました。
ところが、半年も経たないうちにまた同じところに亀裂が入ってきたんです。
再度リペアマンに診てもらったのですが、この状態では僕には直せないから、フランスのメーカーまで送って直す、という大変な事態に発展してしまいました。
楽器が直るまでマウスピースとタルは手元に置き、その時にできる練習をするしかありません。
楽器を持ち始めた当初に逆戻りしたような練習が続いた事は、基礎固めに好都合となりました。
口元をゆっくりと確認する期間によってアンブシュアが安定し、タンギングの練習にも特化できたので、結果的にこの事態は後の演奏技術に活かされる事となったんですね。
2ヶ月程楽器と離れていましたが、痛々しかった傷は完全に補修され、少し跡は残ったものの、長い時間を経た現在でもフランス帰りのクラリネットは割れる事無く演奏ができています。
今でも修繕跡を見る度に、愛しさを感じますし修理してくれた方の職人魂を感じます。
一流メーカーの楽器を与えてもらった事を、この出来事を通して心から両親に感謝しました。
今回は、クラリネットを初めて吹くまでの話と、基礎練習のメニューや楽器が割れる事はあるのか?という事について書いてみました。
最後までお読み下さり、ありがとうございます。
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